味噌と醤油が甘い
福岡に転勤した。
御飯がおいしいでしょうと、みな口々に言う。
確かにおいしい。
魚は豊富にあるし、どこのお店でも新鮮なものが食べられる。
鶏肉もとてもおいしい。焼き鳥屋さんがたくさんある。
糸島産の野菜もとても人気だ。安いし、みずみずしい。
適当な店に入ってもたいていおいしく、東京のチェーン居酒屋ぐらいの
金額でそれ以上のクオリティの料理をおなかいっぱい食べられる。
ただ、ただだ。
味噌と醤油が甘いのだ。
こればかりは自分の東北舌を恨むしかないのだが、
九州全般で使われる刺身醤油に使われる謎の「うまくち」と
麦みそというやつがどうにも甘ったるく、脳がもやっとする。
煮魚などもどうにも甘い。カラメル感がとても強い。
食事に「甘さ」の無かった地域に育ったために
どうにもこういう、食事に入ってくる甘さになれない。
酢豚のパイナップルとかはまあ、いい。あれは全体が甘くなるわけでない。
あの甘口しょうゆというのは、御飯に合わないではないか。
私は行儀の悪い人間なので、しょうゆにつけたお刺身を
ごはんにワンバンさせるたちなのだが、あのうまくちではどうにもならない。
あれは醤油ではなくたれだ。
麦みそのしみじみとした甘さは、どうにもやるせない。
ぶた汁なんかだと、豚の油の甘さが余計に強くなる気がする。
きりっと塩気があってほしいと思ってしまうのだ。
福岡は結構好きだなあと思うのだけど、結構根本のところで相いれないので
なんだかせつない。
とっても仲良く話せるけど、絶対付き合ったりしないなあという
予感だけはしっかりある男の子のようである。